北海道川上郡標茶町。2,000ヘクタールの牧場のてっぺんに、1泊380円のキャンプ場がある。
朝、テントから出たら雲海の上だった。写真を撮って、絶景の中で日の出を見て、それで380円。この記事はその記録。
ただしこの場所、周りに何もない。温泉も、コンビニも、スーパーも。そこだけは先に書いておく。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 北海道川上郡標茶町標茶798-1 |
| 問い合わせ | グリーンヒル多和 015-486-2806 |
| 料金 | 1泊 大人380円/小人220円、日帰り 大人・小人 各110円 |
| 営業期間 | 5月1日〜10月31日(冬季休業) |
| 予約 | 不要・全面フリーサイト |
| 受付 | グリーンヒル多和 |
| サイト | 芝・ゆるい傾斜あり |
| トイレ | 1箇所 |
| 炊事場 | 1箇所・水のみ |
| ゴミ | 持ち帰り |
| 風呂 | 場内になし。近隣にもなし |
| 売店 | グリーンヒル多和(すぐ隣・日中のみ) |
訪問は2023年7月8日、1泊。支払いは大人380円。
380円の中身
受付は隣接するグリーンヒル多和。レストランと売店を兼ねた建物で、ここでお金を払う。1泊大人380円。日帰りなら110円。
この金額で何が付いてくるかというと、トイレと炊事場、そして芝のサイト。それだけ。電源もシャワーもない。ただし、この場所の価値は設備ではない。
キャンプ場は多和平展望台の下に広がっている。付近一帯は総面積2,000ヘクタールの標茶町育成牧場で、視界をさえぎるものがない。360度、地平線が見える。
有料のキャンプ場で3,000円払って木立の中に張るのと、380円でこの景色の中に張るのと、どちらが満足度が高いか。少なくともこの日は後者だった。
サイトと地面
全面フリーサイト。区画はなく、好きなところに張る。景色を堪能したいなら斜面の上の方だが荷物の持ち運びがやや大変なので悩みどころ。運搬用の一輪車はある(確か2台)
地面は芝。ペグは普通に入る。鍛造でなくても問題ない。ゆるやかな傾斜地なので、張る前に寝る向きを決めておくといい。頭が下になると朝つらい。
遮るものがないということは、風も遮られないということ。丘の上なので風が強い日はかなり来るはずだが、この日はほぼ無風だった。運が良かったと思っている。張り綱とペグはしっかり打っておいたほうがいい場所ではある。
7月上旬の夜は冷える。日中が暖かくても、朝方は息が白い程度まで下がることがある。夏用シュラフ1枚だと寒い可能性がある。別の年の9月下旬に来たときはマイナス1度まで下がった。
朝のこと
この記事を書いている理由の大半はこれ。
朝、テントから出たら、眼下が雲で埋まっていた。谷筋に雲海がたまり、その上に太陽が出てくる。牧柵のシルエットと、自分のテントと、雲の海。
雲海は毎回見られるわけではない。前日の湿度と、夜の冷え込みと、風のなさが揃ったときに出る。この日はたまたま条件が揃った。
夜は夜で、街灯がほとんどないので星がよく見える。標茶町の公式も「満天の星空が大地と接している」と書いているが、誇張ではない。
つまり多和平は、夜と朝に価値が集中しているキャンプ場ということになる。日中に通過するだけだと、ただの牧場の展望台で終わってしまう。泊まる意味が明確にある場所。
着いてからは何も手に入らない
ここが多和平のいちばんの注意点。
まず、近くに温泉がない。キャンプ場から歩ける距離はもちろん、車やバイクで10分圏内の範囲には日帰り入浴施設がない。道東は温泉だらけの土地なので油断しがちだが、この丘の上だけは例外。風呂は、着く前に済ませるものだと考えておいたほうがいい。弟子屈の市街まで出れば入浴施設は数軒ある。
次に、買い出しができる場所も遠い。いちばん近い市街地は弟子屈だが、そこまで車で30分前後かかる。コンビニも同様で、ふらっと行ける距離ではない。夜に「何か足りない」と気づいても、取りに行くという選択肢が現実的に消える。弟子屈市内であれば入浴施設は数軒ある。
場内の売店はグリーンヒル多和だけで、ここも日中の営業。17時を過ぎれば周囲は牧場と自分のテントだけになる。夜に行くのは動物の飛び出しなどもあるため推奨しない。街灯もないため完全な暗闇となる。
実際に使った店はこうだった。
買い出しはフクハラ摩周店(弟子屈町鈴蘭4-1-8/10:00〜21:00)。弟子屈の市街にあるスーパーで、この周辺では品揃えのあるほう。多和平に上がる前にここで食料と飲み物を積んだ。
風呂は鶴居ノーザンビレッジホテルTAITO(鶴居村鶴居西1丁目/日帰り入浴 平日11:00〜22:00・受付21:30、日曜祝日は10:00から/大人700円)。ただしこれは鶴居村で、多和平からはかなり離れているが、モール泉で湯質はかなり良い。キャンプ場から往復する場所ではなく、帯広方面から向かう場合、道中で寄る場所。
もう少し近い選択肢としては、標茶町市街のホテルテレーノ気仙(標茶町桜8-38)が日帰り入浴をやっている。5:30〜8:00と10:30〜21:00という変則的な時間帯で、朝風呂に入れるのは珍しい。それでも市街地までは距離があるので、「近い」というより「まだマシ」という程度。
注意点
トイレはグリーンヒル多和の建物近くにある。サイトの奥の方に張ると5分くらい歩くことになるので注意。ただ、手前側は眺めがあまり良くないのでどちらを選択するかは本人次第。
朝の撤収時はカラスに注意。外に置いてあった牛乳を嘴で突かれ、パックに穴が空いてしまい捨てることとなった。集団でいるのでテントの中にしまっておくことを徹底する必要があるが、状況によっては無理やりテントの中に侵入してくるかもしれない。
時期にもよるが、朝は放射冷却で冷え込みが激しい。夏でも10度以下になることもあるため服装には注意。
行く前に決めておくこと
この場所は「設備を使いに行く場所」ではなく「景色の中で寝に行く場所」なので、組み立て方が少し違う。
風呂と買い出しは、丘に上がる前に全部終わらせておく。これに尽きる。着いてからできるのは、張ることと、見ることだけ。水はあるが、それ以外は持ち込んだものがすべてになる。
到着は夕方までに。日没の時間に間に合えば、夕焼けと星と朝日を全部拾える。逆に暗くなってから着くと、傾斜も周囲の状況も分からないまま張ることになる。
そして、朝は早く起きる。雲海が出ていたらそこが本番で、昼まで寝ていたら380円の半分は捨てたことになる。
380円で、2,000ヘクタールの牧場のてっぺんに泊まれる。設備は最低限で、周りには何もない。ただしこの場所に求めるものは設備でも利便性でもない。
買い出しと風呂を事前に片付けるという一手間さえかければ、あとは景色しか残らない。雲海は運だが、星は晴れていれば毎回出る。北海道の道東を走るなら、ここを行程の軸にして前後を組み立てる価値がある。
関連リンク
ほかのキャンプ場やツーリングの記録はツーリング記録の一覧にまとめてある。
※料金・営業時間は訪問前に公式で最新情報を確認してほしい。






