会社員が使える制度を全部並べて、優先度をつけた

2026.11.01公開

iDeCo・NISA・ふるさと納税の三つは使っている。ではそれ以外に何があって、自分はどれを使えていないのか。会社員が使える制度を一度ぜんぶ並べて、優先度をつけ直した記録。手元に余裕がない場合にどこから手をつけるかも考えた。

iDeCo、NISA、ふるさと納税。この三つは使っている。年末調整の書類を書きながら、ふと「ほかに何があるんだろう」と思った。使えるのに知らないまま過ぎている制度があるかもしれない。

そこで一度、会社員が使える制度をぜんぶ並べてみた。そのうえで、自分の条件で優先度をつけた。

前提:誰の話か

制度の有利不利は条件で変わるので、先に自分の条件を書いておく。

項目 内容
年齢 41歳
家族 独身・扶養なし
住まい 賃貸(1K・家賃55,000円)
働き方 会社員(給与所得のみ)
年収 600万円台
生活費 月139,000円
現金 約1,200万円

扶養家族がいない、家を買っていない、副業をしていない。この三つで使える制度がかなり絞られる。逆に言えば、残ったものは全部使い切る価値がある。

優先度の一覧表

まず結論から。◎は無条件で使う、○は条件が合えば使う、△は判断が分かれる、×は自分には使えない。

優先度 制度 自分の状況 効果の目安
◎ iDeCo 使用中 年8万円前後の節税
◎ NISA 使用中 運用益が非課税
◎ 従業員持株会 使用中 奨励金20%(年36万円)
◎ ふるさと納税 使用中 自己負担2,000円で返礼品
◎ カフェテリアプラン 使用中 年75,000円分
○ 医療費控除 該当なし 10万円超から
○ セルフメディケーション税制 該当なし 12,000円超・上限88,000円
○ 高額療養費制度 該当なし 自己負担に上限
○ 損益通算・繰越控除 該当なし 3年繰り越せる
△ 生命保険料控除 入っていない 最大12万円の控除
△ 特定支出控除 ほぼ無理 条件が厳しい
△ 財形貯蓄 使っていない 利子が非課税
× 住宅ローン控除 賃貸 —
× 扶養控除・配偶者控除 独身 —
× 小規模企業共済 会社員 —
× 青色申告特別控除 事業所得なし —

並べてみて分かったのは、「使えるのに使っていない制度」が自分の条件ではほぼ残っていない、ということだった。増やす余地があるのは制度の数ではなく、すでに使っている枠の中身のほうになる。

◎:毎年使っている5つ

iDeCo

掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」になる。今年の払込は267,000円で、節税額は所得税と住民税あわせて8万円前後の見込み。

弱点は60歳まで引き出せないこと。これは節税の対価として受け入れている。2027年から上限が月62,000円(年744,000円)に上がる予定なので、来年は手続きをして満額に寄せるつもり。

注意点として、個人払込の場合は年末調整で自分から申告しないと控除されない。自分はこれを一度やらかしている。

NISA

年間360万円(つみたて120万円+成長240万円)、生涯1,800万円まで運用益が非課税。生涯枠の残りは1,000万円弱。

iDeCoと違っていつでも売却できるので、流動性の面では上。ただし掛金が所得控除にならないので、「今年の税金を減らす」効果はない。この違いが後の優先順位に繋がる。

従業員持株会

奨励金が拠出額の20%。東証の2024年度調査では、奨励金を出している会社のうち拠出金1,000円あたり200円以上を出しているのは全体の1割程度なので、恵まれている部類だと思う。

自社株を持ち続けるつもりはないので、3か月ごとに全部売ってインデックスに移している。

→ 詳しくは 従業員持株会に上限まで入れて、3か月ごとに全部売る

ふるさと納税

厳密には節税ではなく「前払い+返礼品」だが、自己負担2,000円で済むなら使わない理由がない。今年は59,000円を1自治体に4回。

iDeCoを増やすと課税所得が減るので、ふるさと納税の上限も下がる。自分の場合で5,000円強。ただしiDeCoの節税額のほうがはるかに大きいので、順番は「iDeCoを先に決めて、残った枠でふるさと納税」になる。

→ 詳しくは ふるさと納税の返礼品が、2か月で1,500円値上がりしていた

カフェテリアプラン

会社の福利厚生で、年75,000円分のポイントが付く。使わなければその年のぶんは消えるので、現金が増えるわけではないが「使わない=捨てている」という点では奨励金に近い。

ただし何にでも使えるわけではない。自分のところは資格取得の受験料、参考書、健康器具の一部といったあたりに限られていて、宿泊やスポーツ施設には一切使えない。旅行に充てられるプランもあると聞くが、少なくとも自分の会社は違う。

毎年使い切ってはいるものの、正直なところ使い道を探すほうが大変になってきている。ツーリングの宿代に回せれば一番うれしいのだが、そういう仕組みではない。結果として、資格の受験料と技術書を中心に消化する年が続いている。使い道が限られているなら、年度の早いうちにメニュー表を見て「今年は何に使うか」を決めてしまったほうがいい。期限が近づいてから慌てて選ぶと、要らないものを買って消化することになる。

制度の中身は会社ごとにまったく違うので、まずは自分のところの対象範囲を確認するところからになる。

○:該当したら使うもの

今年は使っていないが、条件を満たせば使える。知らないと取りこぼすので並べておく。

制度 使える条件 手続き
医療費控除 年間の自己負担が10万円超(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得の5%超) 確定申告
セルフメディケーション税制 対象医薬品の購入が年12,000円超(控除上限88,000円) 確定申告
高額療養費制度 ひと月の医療費が自己負担限度額を超えたとき 健保へ申請
損益通算・繰越控除 投資で損失が出たとき 確定申告

いくつか補足する。

医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できない。 どちらか一方を選ぶ。医療費が10万円に届かない年でも、ドラッグストアのレシートを集めると後者で届くことがある。レシートの対象商品には印が付いていることが多い。

高額療養費制度は、申請しないと戻ってこない。 健保によっては自動で払い戻してくれるところもあるが、そうでない場合は自分で申請する。なお自己負担限度額の見直しが議論されているので、実際に使うときは加入している健保の最新の案内を見るのが確実。

損益通算の落とし穴はNISAだ。 NISA口座の損失は、ほかの口座の利益と通算できないし、繰り越しもできない。非課税の裏返しで「損失もなかったこと」になる。特定口座の損失なら3年間繰り越せる。年内に持株会の売却代金が特定口座に入るので、ここは来年の確定申告で確認することになる。

△:判断が分かれるもの

生命保険料控除は、独身で扶養がいない自分には優先度が低い。控除を取るために保険に入るのは順序が逆で、死亡保障の必要性が薄い以上、年間数万円の保険料を払って1〜2万円の節税を得ても差し引きではマイナスになる。守る相手ができたら考え直す。

特定支出控除は、会社が負担しない通勤費・研修費・資格取得費などが「給与所得控除の半分」を超えた場合に使える。年収600万円台だと80万円前後が基準になるうえ、会社の証明が要る。現実的ではない。なお資格取得費はカフェテリアプランで先に補助が出てしまうので、そもそも自己負担として積み上がらない。

財形貯蓄は、住宅・年金目的なら利子が非課税になる枠がある。ただし低金利では恩恵が小さいので、同じ金額をNISAに入れたほうがいいと判断している。

×:使えないもの

ここは早めに諦めたほうが時間の節約になる。

制度 使えない理由
住宅ローン控除 賃貸。買う予定もない
扶養控除・配偶者控除 独身・扶養なし
小規模企業共済 会社員(個人事業主・役員向け)
青色申告特別控除 事業所得がない
地震保険料控除 賃貸の火災保険に地震特約を付けていない
ひとり親控除・寡婦控除 該当しない

節税の記事を読んでいると住宅ローン控除の話が必ず出てくるが、賃貸を選んだ時点で縁のない話になる。家賃55,000円で住めている以上、控除のために買う理由はない。

優先順位の考え方

なぜこの順番になるのか。基準は三つある。

一つ目は、確実性。 運用のリターンは読めないが、所得控除で減る税金と持株会の奨励金は計算できる。拠出額の20%という奨励金は、相場が何をしようと拠出した時点で確定する。だから持株会とiDeCoが上に来る。

二つ目は、取り返せるかどうか。 NISAの枠は、その年に使わなかったぶんは消える(翌年に繰り越せない)。ふるさと納税は12月31日で締まるし、カフェテリアのポイントも年度で消える。一方、医療費控除のような「後から確定申告すればいい」ものは5年の猶予がある。期限で消えるものが先、後から取り返せるものは後。

三つ目は、手間に対する効果。 ふるさと納税のワンストップ特例は申込ごとに書類が要るし、確定申告となればもっと手間がかかる。数千円のために半日使うなら、その時間で別のことをしたほうがいい場合もある。

手元に余裕がない場合はどうするか

ここまでは「現金が1,200万円ある人の話」なので、そのまま真似すると危ない。同じ制度でも、手元に余裕がない段階では順番が変わる。

段階0:生活防衛資金が先

まず、何かあったときに生活が止まらない現金を作る。目安は生活費の半年分。自分の生活費(月139,000円)なら84万円ほどになる。

この段階でiDeCoに全力を入れるのはおすすめしない。節税効果は確かにあるが、60歳まで1円も引き出せない。失業や転職の端境期に現金がないと、結局その分を借りることになって、節税額より利息のほうが大きくなる。

段階1:会社の制度を確認する

お金を出さなくても確認できるものが先。カフェテリアプラン、住宅手当、健保の補助、資格取得支援。使わなければ消えるだけなので、調べるコストに対して効率がいい。ここは年収や貯金の額に関係なく、今日できる。

持株会も、奨励金が付くなら月5,000円からでも入る価値がある。拠出した瞬間に奨励金が乗るのは、ほかのどんな運用よりも確実。

段階2:NISAを少額から

iDeCoより先にNISAを勧めるのは、引き出せるから。月5,000円でも1万円でもいい。相場が動いたときに自分がどう感じるかを、金額が小さいうちに体験しておくほうがいい。

段階3:iDeCo

現金のめどが立ってから。月5,000円から始められるので、余裕ができたら増やす形でいい。所得税率が低いうちは節税効果も小さいので、焦る必要はない。

段階4:ふるさと納税

これを最後に置くのは、先に2,000円を払う必要があるのと、戻ってくるのが翌年6月以降だから。上限も年収に比例するので、年収300万円の独身だと3万円弱しかない。食費の足しにはなるが、無理に枠を埋めるものではない。

段階 やること 目安の金額
0 生活防衛資金 生活費の半年分
1 会社の制度を確認して使う(持株会など) 0円〜月5,000円
2 NISA 月5,000円〜
3 iDeCo 月5,000円〜
4 ふるさと納税 上限の範囲で

自分も最初からこの形だったわけではない。順番を間違えて現金が足りなくなるほうが、制度を一つ使い損ねるよりずっと痛い。

来年の宿題

  • iDeCoを月62,000円に引き上げる手続き(2027年から)
  • iDeCoを増やしたあとのふるさと納税の上限を再計算する
  • NISAの生涯枠の残りを簿価ベースで数え直す
  • カフェテリアの使い道を年度の早いうちに決める(毎年これで悩んでいる)

制度は毎年どこかが変わる。来年もまた並べ直すことになると思う。

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本記事は個人の記録であり、特定の金融商品の推奨や投資・税務上の助言ではありません。制度の適用可否は個々の状況によって異なります。

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