出発前に予算を決めて行ったわけではない。帰ってきてレシートと記録を並べたら、この金額だったというだけだ。
この話をすると「よく我慢できるね」と言われるが、我慢している実感がない。使っていないものは、もともと欲しくないものばかりだった。逆に、削っていないものもある。年末が近いので、2026年に行った2本のツーリングの出費を、ガソリン代と高速代まで含めて全部数え直してみた。
年間でいくら使っているか
ツーリング関連で年間に確保している枠はこうなっている。
| 区分 | 金額 | 頻度 |
|---|---|---|
| 長距離ツーリング | 150,000円 | 年1回 |
| 中距離ツーリング | 70,000円 | 年1回 |
| 近場のツーリング | 120,000円 | 月平均10,000円 |
| 合計 | 340,000円 |
ただしこれは枠の話で、毎年この通りに使うわけではない。去年は北海道に1回、今年は東北に2回(ゴールデンウィークとお盆)と四国で3回になった。区分どおりに年1回ずつ、とはなっていない。総額が枠に収まっていればいいという運用をしている。
削っていないもの
先に、削っていない部分を書いておく。
食事は削らない。1日1,500円前後は使っている。スーパーの半額惣菜が中心だが、これは節約の手段であると同時に楽しみでもある。土地の魚が安く並んでいるのを見つけるのが面白い。
風呂も削らない。日帰り温泉は1回300円から750円で、毎日入る。キャンプが続くと風呂は体力の問題になる。
道具も削らない。安物で済ませて買い直す方が高い。
使っていないもの
酒、煙草、ギャンブル、ゲーム課金、推し活。このあたりに一円も使っていない。これは節約の工夫ではなく、もともと興味がないだけだ。我慢している人と同じ結果になっているが、過程がまったく違う。
節約記事でここを「努力」として書くと嘘になるので、相性の問題として書いておく。
旅のやり方
移動は一般道が基本
高速道路は原則として使わない。使うのは自宅から目的地エリアまでの移動だけで、現地に着いたら一般道で走る。二輪の定額プランや定率割引がある区間はそれを使う。
そもそもバイクに乗っている理由が「走ること」なので、一般道の方が目的に合っている。節約と目的が一致している数少ない部分だ。あとは、地方は信号が少なく比較的スムーズであること、バイパスや無料高速で代用可能であることも大きい。
例えば東北の例では、最寄りの高速IC〜新潟西IC(約300km)は高速にして、その後新潟バイパス(無料)、日本海東北自動車道(一部区間/無料)で距離を稼ぐようにする。
帰りは八戸方面から東北自動車道か三陸道(無料)の選択肢があったが、こちらも多少日程に時間があったので三陸道で南下するようにした。これだけでも3,000円程度は浮くし、近くのスポットにも気にせず立ち寄ることができる。
宿は無料から数百円のキャンプ場
これが一番大きい。実際に泊まったところを挙げると、こうなる。
- 咸陽島公園キャンプ場(高知)無料
- 秋田県立中央公園ファミリーキャンプ場(秋田)300円
- 多和平キャンプ場(北海道)380円
- クッチャロ湖畔キャンプ場(北海道)400円
- 庄内夕日の丘オートキャンプ場(山形)440円
場所にもよるが基準は1泊1,000円までで、この範囲でだいたい見つかる。市町村や都道府県が運営している公園のキャンプ場は、この価格帯が多い。
東北や四国は無料格安キャンプ場が多く、上記条件を満たせるが、関東・東海地方や関西地方は厳しいかもしれない。
曜日で宿を組み替える
四国に行ったのはシルバーウィークだった。連休の前半は宿がどこも高いか埋まっているので、前半は無料のキャンプ場だけで組んだ。美濃田の淵、宮の前公園(2泊)、咸陽島公園で4泊。そのあと平日に入ってから、3,000円前後のホテルを3泊続けた。
シルバーウィーク期間は一般的なビジネスホテルが素泊まりで2万〜でとても手を出す気は起きなかった。(それでも最終的には売り切れたようなので需要はあるのだろう)
キャンプ場は曜日で料金が変わらない。ホテルは変わる。この差を利用して並べ替えるだけで、8泊で8,500円、1泊あたり1,063円になった。
連泊の途中に1日、屋根の下で寝る
テントが続くと洗濯物がたまるし、体力も落ちる。東北では8泊のうち1泊を温泉宿にして、四国では後半3泊をホテルにした。洗濯、休養、風呂をこの日にまとめて片付ける。
天気が良くない日(曇りや雨)を休息日とするのが良い。晴れの日は少しもったいなく感じる。
ホテルに併設されているランドリーは格安ホテルでも意外とあるので、それを活用すると効率が良い。
基準を超えた日の話
東北では1泊6,980円の宿に泊まっている。基準の1,000円を大きく超えているので、理由を書いておく。
その前の3泊が440円、300円、300円だった。天気が良くなく、洗濯もしたかった。温泉が入り放題で、日帰り温泉750円を2回分と考えれば実質5,500円ほどになる。ゴールデンウィークに同じ宿へ4,980円で泊まった経験があり、5,000円台で泊まる価値のある宿だと分かっていた。
結果として8泊の平均は1,628円に収まっている。1泊単位で基準を守るのではなく、旅全体の平均で見ている。
夕食はスーパーの半額
閉店時刻から逆算して、半額シールが貼られる時間に行く。これは自宅での習慣がそのまま旅先に出ているだけで、旅行用の節約術ではない。
土地のスーパーは面白い。並んでいる魚が違うし、惣菜の種類も違う。四国ではフジ、秋田ではスーパーセンターアマノ、北海道では弟子屈のフクハラといった具合に、行った先の店が記録に残っている。宝探しのようなもので、これを苦行だと感じたことはない。
飲み物は水筒を持っていて、足りない分だけ1.5リットルのペットボトルを買う。9日間で1,000円程度だった。
風呂は日帰り温泉で済ませる
1回300円から700円。東北9日間で2,720円、四国9日間で3,000円だった。
なの花温泉 田田(山形)が500円、浪岡温泉(青森)が540円、姉戸川温泉(青森)が330円、松ノ湯(青森)が350円、美濃田の湯(高知)が700円、道後温泉(愛媛)が700円。東北の方が安い傾向がある。
場所にもよるが東北でいえば、青森、秋田、山形は日帰り温泉が安い傾向。岩手は普通、宮城は高めか。
行き先そのものに、ほとんど金を払っていない
宿と食事の話ばかりになりがちだが、実際に大きいのはここかもしれない。有料の観光施設にほとんど行っていない。
男鹿半島を一日かけて回った日、入場料を払った場所はゼロだった。寒風山(山頂からの眺めは無料で、回転展望台だけ有料)、ゴジラ岩、大桟橋展望台、八望台、入道崎、ポートタワー・セリオンの展望室。全部タダで、しかもどれも男鹿を代表する景色だ。宗谷を一周した日も同じで、宗谷岬も宗谷丘陵もエサヌカ線も、走って立ち止まるだけなら一円もかからない。
バイクで走っていると、そもそも目的地が「道」や「岬」や「丘」になる。建物に入らないので、入場料という概念があまり出てこない。
ただし、払うときは払う
東北の最終日、石巻の震災遺構・門脇小学校に600円払って入った。これは削る対象ではない。行かないと分からないものには払う(一度震災の状況を知りたかったというのもある)。
線引きははっきりしていて、「その場所でしか得られないか」で決めている。展望台から見る景色は、隣の無料の駐車場からでも八割がた見える。残り二割に有料分の価値があるかは、毎回その場で判断する。寒風山では上がらなかったし、セリオンは無料だったので上がった。
無料スポットの探し方
地方であれば、たいていのスポットは無料だ(有名な観光地や市街地は別)。Googleマップでその日の行き先をざっくり決めたら、あとは近くにある自然系のスポットや、眺めの良さそうな場所を拾っていくだけになる。
一部では駐車場が有料のこともあるが、ほとんどは無料だ。無料スポットを探しているというより、地方を走っていると有料の場所にあまり出会わない、というのが実感に近い。
道具の元は取れているか
キャンプ道具一式は5万円から10万円かかる。これを旅費に含めずに「宿代400円」と言うのはフェアではないので、計算しておく。
1泊3,000円のビジネスホテルの代わりだと考えると、34泊で元が取れる。年に15泊するなら2年ちょっとだ。道具は手入れすれば10年はもつので、長期では確実に回収できる。
逆に、年に2泊か3泊しかしないなら、素直に宿に泊まった方が安い。年に何泊するかを先に見積もれば、買うべきかどうかは計算で出る。
自分の道具はすでに100泊ほど使っているが、まだ使い倒していくつもりだ。
それと、金額とは別のメリットがある。繁忙期でも寝床に困らないことだ。ホテルは当日になると全室売り切れということが多々あるが、キャンプ場なら予約不要のところが多く、たどり着けば泊まれる。
計算どおりにいかない日もある
秋田で、潟上市のきららの湯(500円)に寄るつもりが故障で入れず、キャンプ場のシャワーで済ませた日があった。この日は結果的に400円安くなったが、逆に高くつくこともある。
対策はひとつで、代替案を必ず一つ持っておく。風呂が駄目ならシャワー、スーパーが閉まっていたらコンビニ、キャンプ場が満杯なら道の駅。予定を詰めすぎると、崩れたときに高い選択肢しか残らない。
実例:9日間を2回
2026年に行った2本の実額を出す。ガソリン代と高速代まで含めた。
東北ツーリング(8月8日〜8月16日)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 宿泊(8泊) | 13,020円 |
| 食事・飲料 | 15,050円 |
| 風呂 | 2,720円 |
| コインランドリー・その他 | 900円 |
| 現地合計 | 31,690円 |
| ガソリン(約2,200km) | 約17,300円 |
| 高速 | 8,380円 |
| 総額 | 約57,400円 |
現地分だけなら1日あたり3,521円。6,980円の宿を除くと1日2,745円になる。移動費を足した総額では1日あたり約6,400円。
四国ツーリング(9月18日〜9月26日)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 宿泊(8泊) | 8,500円 |
| 食事 | 12,000円 |
| 飲料 | 1,000円 |
| 風呂 | 3,000円 |
| コインランドリー | 1,000円 |
| 現地合計 | 25,500円 |
| ガソリン(約1,200km) | 約9,400円 |
| フェリー(往復) | 51,480円 |
| 高速 | 約1,400円 |
| 総額 | 約87,800円 |
現地は1日あたり2,833円。移動費を足すと1日あたり約9,800円になる。オーシャン東九フェリーが片道25,740円、往復51,480円で、これだけで総額の59%を占めた。
現地でいくら切り詰めても、移動手段を決めた時点で総額の半分以上が決まっている。四国はそれが露骨に出た例だ。
ガソリン代と高速代の計算
日々の支出のように記録していないので、燃料費は概算になる。
車両はトライアンフ アメリカLT(865cc)で、燃費は約23km/L。ハイオク指定で、全国平均は181円前後だった(レギュラーは2026年10月26日時点で170.1円)。この181円で計算している。高速は二輪車定率割引で、1回の走行が80km超なら37.5%引きになる。
| 走行距離 | ガソリン | 高速・船 | 現地 | 総額 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 東北 | 約2,200km | 約17,300円 | 8,380円 | 31,690円 | 約57,400円 |
| 四国 | 約1,200km | 約9,400円 | 約52,900円 | 25,500円 | 約87,800円 |
走った距離は東北が四国の2倍近いのに、総額は東北の方が3万円安い。差は船代だ。
ではフェリーをやめて自走すればいいかというと、そう単純でもない。往復の高速代とガソリン代に加えて、道中で2泊増える。関西方面は無料や格安のキャンプ場が少ないので、その2泊は宿代がかかる。計算すると総額の差はあまり出ない。それなら寝ている間に移動が終わる方を選ぶ、という判断だった。
船代が高いのは事実だが、「船をやめれば安くなる」わけではない。遠くへ行くこと自体にかかる費用だと思っている。
なお年間の枠34万円に対して、ここで挙げた2本で約14万5,000円。これにゴールデンウィークの東北と近場のぶんが乗るので、今年は枠をほぼ使い切る形になりそうだ。
平均と比べてみる
観光庁の2025年の統計では、日本人の国内宿泊旅行の単価は1人1回あたり72,412円、前年比4.4%増となっている。日帰りは約20,000円、宿泊と日帰りを合わせた全体では48,424円。
| 泊数 | 金額 | |
|---|---|---|
| 国内宿泊旅行の平均 | 1〜2泊 | 72,412円 |
| 東北ツーリング | 8泊 | 約57,400円(移動費込み) |
| 四国ツーリング | 8泊 | 約87,800円(移動費込み) |
平均の「1回」には1泊や2泊が多く含まれるので、泊数がまるで違う。それを踏まえると、東北は8泊して平均を下回った。四国は平均を超えているが、超えた分はほぼ全額が船代だ。
現地での生活費だけで比べるなら、東北が31,690円、四国が25,500円。1泊あたりに直すと3,000円前後で、平均の数分の一になる。
浮いた分はどこへ行くか
旅行で浮いた金をどこかに貯めているわけではない。毎月の積立額が先に決まっていて、生活費と旅行費を引いた残りが自動的にそちらへ回る構造になっている。
だから旅行枠の34万円は、使い切っても計画が崩れない。使わなければそのぶん積立が増える。節約のモチベーションを維持する工夫は特にしておらず、残高だけを見ている。
どこまで真似できるか
正直なところ、全部は真似できないと思う。仕分けしておく。
誰でもできること
- 移動手段を先に検討する。 四国の例のとおり、ここで総額の半分以上が決まる。現地での節約より先に手をつける部分だ。
- 曜日をずらす。 連休の前半をキャンプ、後半の平日をホテルにするだけで、同じ日数でも宿代が半分以下になる。
- 飲み物を水筒にする。 1日400円としても9日間で3,500円。これは誰でも今日からできる。夏場は氷を入れておくことで低温を維持できることもメリット。
- 有料施設に入る前に、無料で見える範囲を確認する。 払う価値があるときはある。ただし「来たから入る」で払うと、一日で2,000円、3,000円はすぐに積み上がる。
真似しにくいこと
- テントで寝られるかどうか。これは体質と好みの問題で、無理な人には無理だ。
- 半額シールを探すのを楽しめるかどうか。苦痛だと感じる人がやると長続きしない。
- 酒を飲まないこと。1日1,000円でも9日間で9,000円違う。ただし飲む人にとっては旅の中身そのものなので、削れと言うつもりはない。
まとめ
9日間で現地25,500円という数字は、特別な技を使って作ったものではない。宿を無料から数百円のキャンプ場にして、夕食をスーパーで買って、見るものに金を払わず、酒を飲まない。それだけで積み上がった結果だ。
ガソリンと高速代を足しても、東北は9日間で約5万7,000円だった。国内宿泊旅行の平均が1回あたり7万円を超えていることを思えば、泊数の割にはかなり安い。
年に2回か3回、同じやり方で走っている。ゴールデンウィークに東北に行ったときも構成はほぼ同じだった。毎回ゼロから計画を立て直していないので、準備の負担も少ない。
節約のつもりで始めたわけではなく、やりたいことをやったら結果的に安かった。そういう順番の話として読んでもらえればと思う。


